腰痛は二足歩行の悩み
二足歩行をしている人間にとって腰痛という悩みを抱えている人は少なくありません。腰痛には急に起こる急性腰痛と3か月以上続く慢性腰痛。検査で異常が見つかる特異的腰痛と原因がはっきりしない非特異的腰痛があります。腰痛で悩まされている人の多くは筋力低下や筋力があってもうまく使えていないことが多いです。
特異的腰痛
腰椎椎間板ヘルニア
積み木上に積み重なった腰の骨の間に椎間板というクッションの働きがするものがあります。この椎間板に負担がかかり続けることで外に飛び出してしまうことです。飛び出した椎間板が神経を圧迫すると坐骨神経痛が出たりします。ひどくなると手術が必要になることもありますが再発しないようにするためには筋肉が大切です。
脊柱管狭窄症
背骨にはトンネル状の空間がありこれが脊柱管といいます。神経の通り道になっていてこのトンネルが加齢などで狭くなると神経が圧迫され腰痛や坐骨神経痛を引き起こします。これが脊柱管狭窄症といいます。原因は加齢だけではなく筋肉の機能低下などで反り腰になるとなりやすいといわれています。
変形性腰椎症
通常は腰の骨にかかる負担は椎間板が吸収してくれていますが、長年の負担の蓄積などで椎間板がつぶれてしまうと積み木上の骨の間が狭くなり腰の骨に負担がかかるようになります。負担がかかり続けると人間の体は骨を強くしようとして変形が起こります。中にはとげのようなものができて脊柱管が狭くなることがあります。痛みが出ると動かなくなり筋力が低下してますます骨に負担がかかるという悪循環に陥ることがあります。
腰椎すべり症
椎間板が加齢などでつぶれてしまうと腰の骨が不安定になり腰の骨がずれてしまうことがあります。ずれると脊柱管が狭くなり、坐骨神経痛が起こったりします。ずれてしまったら手術でしか戻せませんが筋肉の使い方で症状を軽減することはできます。
非特異的腰痛から特異的腰痛
腰痛の多くは腰の違和感から始まり、徐々に動かすと痛みが出るようになっていきます。基本的には人間には自然治癒力があるので痛みが出ても治っていき慢性化することはありません。違和感が出た段階では非特異的腰痛のことの方が多いでしょう。しかし、腰痛を放置し腰に負担をかけ続けていると腰の骨や椎間板が変形し神経が圧迫され坐骨神経つにつながることがあります。
腰痛はこのように非特異的腰痛から特異的腰痛に進行していくことがあります。レントゲンやMRIで異常がなくてもまだ異常がないだけかもしれません。異常がない段階から筋肉の使い方を身に着けていく必要があります。
体幹のインナーマッスルとは
深層にある筋肉で、意識的に動かすことは難しく、外からも見えないので鍛えても見た目に変化が出ません。インナーマッスルというと体幹をイメージする人も多いですが同じではありません。インナーマッスルは筋肉の深さのことで、全身にあります。体幹は胴体のことをいいます。腰痛で大切なのが体幹のインナーマッスルです。
体幹のインナーマッスルの働き
姿勢を支える
長時間同じ姿勢でいるには体幹のインナーマッスルが重要です。正しい姿勢が続かない人は体幹のインナーマッスルの衰え、機能低下があるかもしれません。
アウターマッスルの補助
アフターマッスルを使うときに軌道を安定させたりします。
骨盤の安定
骨盤の位置を正しい位置に保持する働き。
内臓を支える
内臓の位置を正しい位置に支える働き
基礎代謝が上がる
体幹のインナーマッスルを鍛えると基礎代謝が上がります。
体幹の主なインナーマッスル
腹横筋
コルセット筋と呼ばれ体幹の安定
腸腰筋
上半身と下半身をつなぐ唯一の筋肉で骨盤の前傾後傾の安定、歩行のサポート
骨盤底筋
骨盤を下から支え、内臓も支えています。
横隔膜
呼吸筋の一つで体幹の安定にもかかわります。
多裂筋
脊柱起立筋の深層にある筋肉で姿勢を支えます。
体幹のアウターマッスルとは
表面にある筋肉で、体幹を曲げたり、そらしたり、ひねったりなど動かすときに使われます。表面にあるので意識的に動かしやすく腹筋などで鍛えやすい筋肉です。鍛えると見た目に変化が出やすい特徴があります。
体幹の主なアウターマッスル
腹直筋
お腹の前側にある筋肉で体幹を曲げる時に使われます。通常の腹筋運動で鍛えることができます。
外・内腹斜筋
体幹を捻る動作で使われます。
脊柱起立筋
体幹を反らすときに使われます。
アウターとインナーの関係
イメージとしてアウターはドアでインナーは蝶番です。蝶番はドアを安定して開けるめにあります。蝶番がぐらぐらだとドアは倒れて開けることができなくなります。
インナーマッスルはあらゆる動作の中で無意識のうちに使われています。しかしインナーマッスルが正しく使われていないと機能が低下し筋力も衰えてきます。大切なのはインナーマッスルの使い方です。正しく使われていないと関節やアウターマッスルに負担がかかり、腰痛につながってきます。
アウターマッスルは腹筋運動などで鍛えることができますが腰痛持ちの人が腹筋運動だけしても腰痛が改善しないことがあります。アウターマッスルだけ鍛えるとアウターばかり働いてしまいインナーマッスルがさらに使われなくなり、かえって腰痛が治りにくくなったりすることがあるからです。両方バランスよく鍛える必要がありますが、大切なのは鍛えた筋肉を動きの中で使えるようになることです。例えば筋肉隆々の人がスポーツをしてもいいパフォーマンスが必ずしもできるわけではありません。鍛えた筋肉を使う練習をしていかないといけません。
モーターコントロールとは
腰は5個の骨が積み重なってできています。しかし、積み木のように積み重なっているだけだと不安定になり安定していないところに負担がかかり腰痛を引き起こします。負担がかからないように安定して体を動かすために必要なのがモーターコントロールになります。
神経や筋肉が背骨を安定させながら体を動かす仕組みのことをいいます。脳から指令が来るとまずインナーマッスルが働いて5っ子の腰の骨を1つのユニットにします。それからアウターマッスルが働くことで、腰に負担をかけずしなやかな動きができるようになります。
モーターコントロールが乱れる
使い方がもともと身についていない人は使う練習をしていかないといけませんが、一度使い方を身に着けてしまえば意識しなくてもできるようになるものです。しかし、乱れることがあります。スポーツもそうですが日頃練習をしていても試合にあると緊張しておもうように体が動かなくなることがあります。腰痛で悩まされている人は痛みに対する恐怖心から無意識のうちに身体が緊張しモーターコントロールが乱れ腰痛が長引いてしまうことがあります。更に日常生活でのストレス、寒暖差や気圧の変化などでも影響を受ける事があります。
モーターコントロールがうまくできる
脳からの指令→インナーマッスルが働く→アウターマッスルが働く→負担がかかりにくい動きができる
モーターコントロールができていない
脳からの指令→インナーマッスルが働かない→アウターマッスルだけ働く→体に負担がかかる
体幹のインナーマッスルトレーニング
ドローイン
お腹をへこませて、腹横筋というインナーマッスルを意識して使う練習です。腹横筋は、コルセット筋といわれ鍛えて使えるようになると、姿勢の安定、腰痛予防、の効果があります。
ドローインのやり方
1・仰向けに寝た状態で膝を立てます。

2・ゆっくりと息を吐きながら、へその下をへこませていきます。へこんだ状態で、息をしながら10~30秒程度キープします。

ドローインのポイント
手を腰の下に入れ手の甲に圧力を感じていれば腹横筋がうまく使えている状態。

- 自然に呼吸をしながらへその下だけへこませる。
- 痛みがある場合は行わない。
- 毎日行っても良い
- 力を入れすぎるとアウターマッスルが働きインナーマッスルの働きが弱くなる。
ドローインは、日常生活でもできます。寝た状態で行うだけではなく、デスクワークで座っている時や立っているときにへその下に力を入れるだけでも効果があります。使う練習を継続することが大切です。
背骨ロール
ヨガなどのエクササイズで背骨の可動域を広げ背中の多裂筋を使う目的で行います。ロールアップとロールダウンというエクササイズがありますが、ロールアップは難易度が高いので腰痛持ちの人は行わない方がいいでしょう。背骨の柔軟性向上、体幹強化、姿勢改善、腰痛予防の効果が期待できます。
ロールアップ
仰向けからゆっくり背骨を一個づつ丸めるイメージで起き上がる
ロールダウン
1・膝を曲げた状態で、足は肩幅に開き、両腕を前に伸ばします。

2・両腕を前に伸ばした状態で腰の骨、背中の骨、首の骨の順番で積み木上になっている背骨を下から順番にベッドに着けていくイメージで行う。

3・さらにゆっくり背中を下からつけていく。きつい場合は無理をせず倒れる。

4・背中がすべて着いたら、1に戻るこれを3回繰り返す。

背骨ロールのポイント
- ドローインを意識しながら行う
- ゆっくり行い、きつい場合は無理をしない
- あおむけから起き上がる時は一度横向きになってから起き上がる
- そのまま起き上がると腰を痛めやすい
バックブリッジ
背骨の可動域を広げ腹横筋、多裂筋、骨盤底筋の使えるようにしていきます。姿勢の安定、腰痛予防、尿漏れなどの効果も期待できます。
1・仰向けになり手のひらは下に向け膝を立てます。足は肩幅に開きます。

2・ドローインをしながら骨盤、腰、背中、の順番でゆっくり持ち上げ、肩。腰、骨盤、膝が一直線になった状態で20秒キープします。その後ゆっくり1の姿勢に戻します。3セットを目標に。

バッグブリッジのポイント
- 痛みがある時は行わない
- 勢いよく持ち上げない
- ストレッチをしてから行う方が良い
- 真っすぐを意識する
サイドブリッジ
横向きの姿勢で、骨盤の維持力強化と腹横筋、腹斜筋、腰方形筋使うトレーニングです。姿勢改善、骨盤の安定の効果が期待できます。
1・横向きになり、下の腕で上半身を支えます。上の腕は腰に添え、両足をそろえ軽く膝を曲げます。

2・ドローインをしながら、腰をゆっくり持ち上げます。胸、腰、骨盤一直線になったところで10秒間キープします。1の姿勢に戻し3回行います。続いて反対側も行います。

サイドブリッジのポイント
- 自然な呼吸で行う
- 体を安定させ、真っすぐ向く
- 楽に感じる人は、膝を伸ばして行う
- 無理せず痛みを感じたら中止する
ハンドニー
ヨガなどでも行われる体幹を鍛えるためのトレーニングです。骨盤の正しい角度とインナーマッスルを使い足を上げることで多裂筋をバランスよく使えるようにします。腰痛予防、姿勢改善、バランス力も身につけます。
1・四つん這いになり、背中を伸ばした状態で腕と脚を肩幅に開きます。

2・背中を伸ばしたまま、片腕を伸ばし、反対側の脚を真っすぐに上げます。伸ばした状態で10秒キープし、ゆっくり1の姿勢に戻し反対側も行います。これを3回繰り返します。

ハンドニーのポイント
- 腰を反らせすぎないように骨盤の前傾、後継の中間位を保つ
- 腕を上げるのが難しい人は脚だけでも効果がある
- 痛みを感じたら中止する
プランク
うつぶせの状態で姿勢を支えるトレーニングです。体幹の強化、姿勢改善、腰痛予防の効果が期待できます。体幹を鍛えることで、姿勢改善や基礎代謝アップなどの効果が期待できます。
1・うつ伏せになり肘を肩幅に開いて床につけます。つま先を立て、体を持ち上げた状態で30秒キープします。

プランクを効果的に行うポイント:
- 自然に呼吸をする
- 一直線になるようにキープする
- つま先で行うのが難しい人は膝をついても良い
- 肘が痛い場合はクッションなどを入れる
- 痛みを感じたら中止する
まとめ
特異的腰痛、非特異的腰痛どちらもそうですが日常生活の精神的、肉体的ストレスなどの負担の積み重ねで起こることがほとんどです。負担を軽減する方法として、姿勢改善や筋力をつけるというのが有効です。運動をすることで精神的ストレスの軽減につながることもあります。
腰痛の改善、再発予防には運動が有効ですが正しいやり方で行わないと逆に悪化することもあります。腰痛改善でジムに通うのもいいですが、アウターマッスルばかり鍛えて悪化することもあります。腰痛改善に一番重要なのはインナーマッスルです。両方鍛えるのが理想ではありますが運動習慣のなかった人はまずインナートレーニングから始めましょう。
アウターマッスルの場合はトレーニングをしたら2日は空けた方がいいですが、インナーマッスルはトレーニングというより使う練習ですので毎日行っても大丈夫です。痛みがある場合は中止してください。まだほかにトレーニングの種類はいくつもありますが、初めから上記のトレーニングすべて行う必要はありません。一番簡単なのがドローインですので、それだけでもいいので続ける習慣から身につけ少しづつステップアップしていくようにしてください。